EVENT REPORT: 2004.1.25

「ウナ・ノーチェ・デ・ファンタシア」 "もも子" と "はるか"(チャチャチカス)への手紙
by 岩倉 千兵衛(アダジオ商会)

ももちゃん、はるかちゃん、このあいだは「ウナ・ノーチェ・デ・ファンタシア」 に出演してくれて本当にありがとう。僕はあの日、自分の出番がある上に、「君たちが楽にのびのびと踊れるように手伝わなきゃ!」と考えて二重に緊張していて、何か妙な感じだった。だから、君たちのショウが成功に終わって、僕は嬉しい。

にわかステージ・パパの緊張

 君たちの先生、富田雅美さんと出会ったのは今から6年あまり前の1997年9月、僕らが所属していたサルサ教室の発表会に彼女の教室の子たちが「チャチャチタス」という名でゲスト出演した日だ。キューバン・ダンスを踊る子どものグループの草分けだったその頃の「チャチャチタス」に、君たち2人が既にいたのかどうかは実は僕は知らない。
  それからキューバン・ダンスの催しで何度もみんなと会ってきた。君たちをはじめ、ひとりひとりのメンバーを意識したのは2002年の4月、君たちの地元・調布で行われた、「富田雅美ダンスユニット」の発表会に僕と友子が出させてもらったときだ。みんなを、初めて場当たりの段階から観た。はるかちゃん、君はお客さんへ向ける顔の表情をちゃんと考えているように僕には見えた。ももちゃん、たくさんの演目のたくさんの立ち位置を確認するときの君の気持ちの入れようは、もうすっかりプロのそれだった。
  ももちゃんに初めて「アダジオ商会」を観てもらったのは去年の1月、中野での「命のつどい」で「サニー・レイ」(サルサ)と「エル・タンゴ・デ・ロクサーヌ」を演ったときだよね。土曜午後の早い時間の出番だったので、僕らを観てからソッコー自分たちの稽古に行ったんでしょ? その日の雅美先生からのメールに「ももたちは『センベイさんすごかったよ!』と興奮しながら稽古に来てましたよ。『女の人を持ち上げてぐるぐる回しながら降ろすんだ』とか。『稽古には遅れないように!』との言い付けをしっかり守ったりして可愛いヤツらなのです」とある。

モダン・ダンスの踊り手でもある雅美さんに「ボデギータのパフォーマンスって、ジャンル関係なしに何でもアリなんですよ」と彼女自身の出演を誘ったのが去年の11月の初め。その月の下旬に君たち2人が「チャチャチカス」名でキューバン・ダンス・コンテストに出たあと(小学生は「チャチャチタス」、中学生以上は「チャチャチカス」って感じなんだよね、確か)、「ジョルジュさんのパーティーにはるかとももを出させてくれない?」との雅美さんからのメールが届き、僕は小躍りして喜んだ。「ももちゃん、はるかちゃんと競演できるっ!」……そして、君たちのグループの踊りと礼儀正しさをよく知ってるジョルジュさんは二つ返事でOKをくれた。それから僕は彼女と何度もメールをやりとりしつつ、1月25日を指折り数えて待った。

早くも満員御礼

 当日、君たちは3時半からのリハーサル予定にもかかわらず早々と2時頃到着。
ジョルジュ師匠が「今日はよろしく。オジサンね、ジョルジュっていいます」なんて、自分のことを「オジサン」って呼ぶのがすっごく新鮮だったな。
  ジョルジュ&リタ、アダジオ商会に続き、細かな場当たりから始まった君たちのリハーサル。その真剣さにはいつもながら頭が下がる。小泉千鶴子さんのバリ舞踊、「フィーバーズ」、小川紀美代さんと須藤信一郎さんのバンドとリハは順調に続いた。今回はエンリケに加えねずみちゃんも音響に携わり、バンドの音の調整も充実したものになった。

5時半、いつものようにタンゴのミニレッスンからパーティーは始まった。君たち2人や雅美さんも参加したこともあってレッスンから大盛況。2組に分けてやらなければならなかったのはたぶん久しぶりだ。レッスンが終わってももちろんフロアはずっと満杯だった。「いくつかパーティーが同時に重なってるから人が入るかな……」なんてリタさんが心配していたが、なんのなんの。およそふた月に1回コツコツとやってきたことで、皆さんに楽しみにしていただいているのがわかる気がした。

これぞ「ファンタシア」のショウ! 豊かなヴァリエイション

 7時半からショウ・タイム。まず、サンバ・チーム「アレグリア」の有志で構成されたその名も「フィーバーズ」が爆笑を誘った。70年代のリズム&ブルースを使って、ジョルジュさんとリタさんが振り付けたちょっとおちゃらけ系のパフォーマンスだ。アフロ・ヘアのかつらをかぶり、顔を黒く塗ったエントツさんがとてもいい味を出していた。使ってる曲は僕が二十代の頃の曲だから、観てて気持ちが入るんだよなあ。

そしていよいよ「チャチャチカス」の登場だ。「お客さんに『フィーバーズ』から気持ち切り替えて欲しいからさ、一度暗転できるかな?」と雅美さんに言われていた僕が照明スイッチを操作した(使用曲、セルジオ・メンデスのサンバ「マグダレーニャ」の展開に少し合わせてみたよ)。「シルエットからスタートする感じでよかった」と彼女にあとでお褒めの言葉をいただいた。
  メリハリの効いた決して飽きさせない構成と、指先・足先までピッ!と伸びた踊り。君たちの伸びやかさは、狭い場所でも十分に発揮されていた。君たちのグループを観にモダンの合同発表会にたまに行くけど、そこに出てくる同年代の子たちの誰にも決して引けを取らない実力が、君たちにはあると僕は思っている。

 三軒茶屋の「スタジオ・ボデギータ」でレッスンを始める小泉さんのバリ舞踊、バンド演奏に続いて今度は「アダジオ商会」の番だ。まだ階段の上の方で着替えていた君たちを「おーい、もう俺たちの出番始まるぞー」と呼んだら、ももちゃんは靴をはかないまま駆け下りて来たことを僕はあとから知った。

「アダジオ商会」は今回は男性3人に女性6人、つまり1人の男性につき2人の女性が交代で組んだ。演目は「アサバーチェ」で、3回目の披露になる今回徐々にこなれてきた感じで、みんなの動きのタイミングがようやく合ってきた気がした。

タンゴらしい振りを主に踊るペアのうちで、きみこ&ぎゅうにはそのダイナミックさのせいでさすがに目が行く。大友&ぶんは、当日のリハで、位置取りの関係で一部変わった振りもしっかりこなす。間中さんと僕のペアも、リハのときより気持ちが入った踊りになったと自負している。大技「アントラッセ」(詳しくはこのサイトの"History of George's Life" 2003年12月8日付を読んでね)も、ひろこ&ぎゅう、とも&ぶん、あけみ&せんべの3組がピタリ揃って上がっていた。
  生演奏をはさみ、トリはもちろんジョルジュ&リタだ。「タンゲーラ」の生演奏に合わせ、キレのいい動きを連発する。1曲1曲、調子の違いに合わせてたくさんの引き出しの中から踊りを出してくる2人。ああ、やっぱりこういう曲のときにはこういう踊りしたいよねえ……と憧れてしまう。

ダンスは出会いの宝庫

 パフォーマンスが終わって、満足げな表情の君たちに、オバサン・オジサンたちが 何人も賞讃の声をかけてたね。僕は君たちを見慣れてるけど、初めて君たちを観た人はさすがにびっくりすると思うよ。
  パーティー後の打ち上げでも、「あの子たちってすごいねー」とみんな口々に褒めていた……と思うんだけど、アダジオ商会のメンバーで今回は踊らなかったひろりんが言い出して、4人でおかしな四部合唱を延々やってしまったり、なんと「フィーバーズ」のエントツさんが僕の中学(大阪市立長吉中学校)の4年先輩だったことがわかって校歌を2人して歌ったりしたおかげで、そんな話は実はあまりできなかった。

今回のアダジオ商会の演目も、「アントラッセ」やタンゴ部分など、僕にとっては まだまだハードルは高いことが多い。でも、「君たちと競演できるんだから、頑張らなきゃ!」という気持ちが僕の背中を押したのは確かだ。 君たちとの出会いは僕の宝物。故郷から遠く離れた土地で中学の先輩と出会うのも宝物。ダンスをこうやって続けていれば、たぶんもっともっと宝物は増えていく。これって、結構素敵なことだよね。

 

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